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アザポジ

エディトリアルデザインしたりオタクしたりしてる人の独り言。アザポジ→編集の際撮影された写真で使用しない画像のこと。

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メモ

午前五時。まだ明けていない空の下を歩く二人がいる。
一人は前を向き、もう一人はその背中を追いながら空を仰ぐ。
後ろの彼が立ち止まると、気配を察知して前の彼も時間差で少しだけ立ち止まる。
足取りがおぼつかないのは酒のせいで、視界も中心より外はぼやけたようにして見えていた。
前の彼は怒ってはいない。けれど悲しそうでもなかったし嬉しそうでも楽しそうでもなかった。ただ淡々と、作業のように、後ろの彼の歩みにあわせてゆっくりと歩いたり立ち止まったりしていた。

下った先の地下鉄のホームは白々としていて無機質だった。けれど眠っているようにも感じられた。電子音と自動改札の開く些か乱暴な音と、切符が吸い込まれ、カチカチという音と共に吐き出された後はただ、しんしんと静けさだけが広がっていった。


彼がホームにぽつんと設置されたよくある椅子に腰を下ろしたので、少し迷って倣って隣に座った。歩いていたときより近い。居心地が悪くて目線は自然に足下に落ちた。まだ床がやわらかい土のような感触に思えて、やっぱり酔っているなと他人事のほうに考えた。居心地の悪さもさることながら、引きずられるような眠気も座った直後から感じていて、それをどうにかやりすごそうと指先に力を入れて爪を立てた。

ふいに風が吹いた。彼は顔をあげてホームを見つめる。涼しく心地よい風に前髪を揺らせた先に見えたのは、なんてことはないただの地下鉄の電車だった。だが、なにかがおかしい。少し考えてあれ、と思わず口に出す。到着するまでアナウンスなど全く聞こえなかったのだ。
隣の彼が立ち上がって早足に乗り込むのを見ながら自分も立ち上がる。電光掲示板に目を向けて、その表示に一瞬目を見開くが、せかすように鳴り響く発車ベルの音に押されるようにドアの向こうに駆け込んでしまった。がしゃん と、扉は閉じて、そして引っ張られるような感覚とともに動く風景。窓の向こうは白いホームが少し続いたかと思うとすぐに真っ暗に塗りつぶされ、それをしばらくぼうっと眺めることしかできなかった。

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スージー メモ

村越さんからバトンを渡されたとき、一緒に貰ったものがあった。
小さくて精巧な鍵。
「これも一緒に、頼んだぞ」
俺はそのドアの前にいて、その鍵はそこを開けるものだと知っていて、そしてドアを開けた。

豪華な絨毯の上で小さなこどもが遊んでいる。
上等な作りのサッカーボードゲームで、側には犬が二匹。

「君、誰?新しい使用人?」
「違うよ。村越さんに言われて来たんだ。君、村越さん、知ってるよね?」
「知ってるよ。」

不機嫌そうに振り返った子どもは長いまつげを携えた瞳をこちらに向ける。

「やっぱり置いてかれたんだ。ボク。」
「置いてかれた?」
ボードゲームの上には人形がたったひとつ。
「コッシーはうそつきだ。」
「とうさんも、かあさんもうそつきだ。」
「ボクはいつも一緒にサッカーしたいって言ったのに」
「みんなボクを置いて違うところへ行く」
仕事で忙しい両親。いつも一人の子ども。
もう大きくなったから平気ね、という言葉。
去って行く村越さんの背中。

俺はしゃがんで子どもの顔を見る
「だから俺が来たんじゃないか」
「代りに?」
「そう。不満かい?」
「スージーもいつか置いてくんだ」
「…そうかもしれないね」
「じゃあ要らない。最初から要らない」
「でもサッカーは」
ボードの上に人形をひとつ。ふたつ。
「ひとりじゃ出来ないよ」
「犬がいるよ」
「一人と二匹じゃまだ足りないなぁ」
「ねえ、村越さんとのサッカー、たのしかった?」
「……うん」
「それは、その時間は村越さんが居なくなっても、置いてかれてもなくならないよ?」
「……」
「ほら。」
古くなった人形をジーノにつかませる。
「君は置いてかれるんじゃないよ。」
「村越さんの意思はここにある。ちゃあんと。受け継ぐんだ。」
胸をさして言うと、ジーノも俺の胸をさした。
「スージーのここにも?」

手をとって立ち上がらせて、ドアに向かう。

「ねえ、ここにあるだけじゃできないことがあるんだ」
「それ、コッシーの代りにスージーにたのんでもいいの?」
「うん。いいよ。」
「じゃあ、あのね…」

驚いた顔でジーノがこちらを見る
後ろでクロが大声で叫んでいる。

「なんだい突然スージー」
大胆だねえといつもの調子のままでジーノは感嘆した。
「…あー…」
「やっぱこういうのの代りは無理なんじゃないかな…」
小さく独り言を言うとそんなことないよとジーノが顔をすりよせてきて
またクロの大きな悲鳴がこだました。


は。

そういやここの存在を忘れていた。

(no subject)

だれもいない~



無題

ついてないことが多過ぎてもう振り返ることは最近しなくなったが、そんな直行にも密かな楽しみはあった。同じ階に住む若い未亡人の佐川さんだ。
いつもこの時間(ハローワークに行くわけだが)に歩けば団地前で佐川さんに出会う。幼稚園の息子達のお見送りの時間なのだ。
近所付き合いなど全くする気もない直行だが佐川さんだけは特別である。なにせこの若未亡人は初日に出会ったときに自ら華やかな笑顔でおはようございますと声をかけてくれた人だからだ。

さて本日も佐川さんにとびきりの挨拶を…とはりきる直行がネクタイを確認しつつ幼稚園バスの停車場所に向かうと。

……先越されたぁ!!っていうか誰だアイツ!!!


目の前には佐川さんと一緒に楽しそうに喋る青年がいた。
強面にピアスにヒゲ…とてもじゃないが品があるとは直行には見えない。
片手に箒を持っているから、おそらく団地の掃除当番の誰かだろう。
直行は瞬時にムダにいい頭を働かせた。
年齢は自分と同じか上くらい。今の時間にここにいるということはどうせしがないフリーターというところだろう。おまけにあの服装にピアス。自分の敵ではない。
いやらしく笑って堂々と挨拶する。
「おはようございます」
「あらおはようございます」

ふわりとした笑顔に癒されながら、今日は天気が良いですね等の軽い会話をする。無論、隣りの青年は完璧無視だ。

ちらりとそちらを伺うと、青年は目を細めて直行をにらみ返す。
なんだよ とイラつきながらも視線を外せずにいるとつかさず佐川さんが自分を彼に紹介した。

「ああ、こちらは最近越して来た…中井さん」
「どーも」
「あー…どうもはじめまして。305号の外川(トガワ)です」
「中井さんは301号室の林さんの甥っ子さんで…あらこれからお仕事なのにすみません引き止めちゃって」
「いえ、そんなことはないです」

ウソではないが少しだけ痛いところをつかれた気がしてちょっとだけ首をすくめると外川と紹介された青年が少し見下すように直行を見た。
なんだコイツうぜえ
そう思うがこんなチンピラにかまってる暇などないのだ。
直行はじゃ、と短く挨拶し、佐川さんにだけ丁寧に頭を下げるとさっさと駅前へと足を運んだのだった。

カウンタ

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いやしゾーン

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コマツ・フツラ
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性別:
女性
職業:
エディトリアルデザインする人
趣味:
漫画と旅と映画
自己紹介:
某美大卒。分裂気質。仕事がないと生きて行けないサラリーマン気質。