忍者ブログ

アザポジ

エディトリアルデザインしたりオタクしたりしてる人の独り言。アザポジ→編集の際撮影された写真で使用しない画像のこと。

雑記 オタク日記 デザイナー日記 オタク+デザイナー日記 読んだ漫画 読んだ本 バトン ちょっとお役立ち 落書 動画はっつけ アイコン おはなし login

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

スージー メモ

村越さんからバトンを渡されたとき、一緒に貰ったものがあった。
小さくて精巧な鍵。
「これも一緒に、頼んだぞ」
俺はそのドアの前にいて、その鍵はそこを開けるものだと知っていて、そしてドアを開けた。

豪華な絨毯の上で小さなこどもが遊んでいる。
上等な作りのサッカーボードゲームで、側には犬が二匹。

「君、誰?新しい使用人?」
「違うよ。村越さんに言われて来たんだ。君、村越さん、知ってるよね?」
「知ってるよ。」

不機嫌そうに振り返った子どもは長いまつげを携えた瞳をこちらに向ける。

「やっぱり置いてかれたんだ。ボク。」
「置いてかれた?」
ボードゲームの上には人形がたったひとつ。
「コッシーはうそつきだ。」
「とうさんも、かあさんもうそつきだ。」
「ボクはいつも一緒にサッカーしたいって言ったのに」
「みんなボクを置いて違うところへ行く」
仕事で忙しい両親。いつも一人の子ども。
もう大きくなったから平気ね、という言葉。
去って行く村越さんの背中。

俺はしゃがんで子どもの顔を見る
「だから俺が来たんじゃないか」
「代りに?」
「そう。不満かい?」
「スージーもいつか置いてくんだ」
「…そうかもしれないね」
「じゃあ要らない。最初から要らない」
「でもサッカーは」
ボードの上に人形をひとつ。ふたつ。
「ひとりじゃ出来ないよ」
「犬がいるよ」
「一人と二匹じゃまだ足りないなぁ」
「ねえ、村越さんとのサッカー、たのしかった?」
「……うん」
「それは、その時間は村越さんが居なくなっても、置いてかれてもなくならないよ?」
「……」
「ほら。」
古くなった人形をジーノにつかませる。
「君は置いてかれるんじゃないよ。」
「村越さんの意思はここにある。ちゃあんと。受け継ぐんだ。」
胸をさして言うと、ジーノも俺の胸をさした。
「スージーのここにも?」

手をとって立ち上がらせて、ドアに向かう。

「ねえ、ここにあるだけじゃできないことがあるんだ」
「それ、コッシーの代りにスージーにたのんでもいいの?」
「うん。いいよ。」
「じゃあ、あのね…」

驚いた顔でジーノがこちらを見る
後ろでクロが大声で叫んでいる。

「なんだい突然スージー」
大胆だねえといつもの調子のままでジーノは感嘆した。
「…あー…」
「やっぱこういうのの代りは無理なんじゃないかな…」
小さく独り言を言うとそんなことないよとジーノが顔をすりよせてきて
またクロの大きな悲鳴がこだました。


PR

COMMENT

COMMENT FORM


管理者にだけ表示を許可する

TRACKBACK

カウンタ

Penguin

いやしゾーン

word

Prof

HN:
コマツ・フツラ
HP:
性別:
女性
職業:
エディトリアルデザインする人
趣味:
漫画と旅と映画
自己紹介:
某美大卒。分裂気質。仕事がないと生きて行けないサラリーマン気質。