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アザポジ

エディトリアルデザインしたりオタクしたりしてる人の独り言。アザポジ→編集の際撮影された写真で使用しない画像のこと。

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無題

ついてないことが多過ぎてもう振り返ることは最近しなくなったが、そんな直行にも密かな楽しみはあった。同じ階に住む若い未亡人の佐川さんだ。
いつもこの時間(ハローワークに行くわけだが)に歩けば団地前で佐川さんに出会う。幼稚園の息子達のお見送りの時間なのだ。
近所付き合いなど全くする気もない直行だが佐川さんだけは特別である。なにせこの若未亡人は初日に出会ったときに自ら華やかな笑顔でおはようございますと声をかけてくれた人だからだ。

さて本日も佐川さんにとびきりの挨拶を…とはりきる直行がネクタイを確認しつつ幼稚園バスの停車場所に向かうと。

……先越されたぁ!!っていうか誰だアイツ!!!


目の前には佐川さんと一緒に楽しそうに喋る青年がいた。
強面にピアスにヒゲ…とてもじゃないが品があるとは直行には見えない。
片手に箒を持っているから、おそらく団地の掃除当番の誰かだろう。
直行は瞬時にムダにいい頭を働かせた。
年齢は自分と同じか上くらい。今の時間にここにいるということはどうせしがないフリーターというところだろう。おまけにあの服装にピアス。自分の敵ではない。
いやらしく笑って堂々と挨拶する。
「おはようございます」
「あらおはようございます」

ふわりとした笑顔に癒されながら、今日は天気が良いですね等の軽い会話をする。無論、隣りの青年は完璧無視だ。

ちらりとそちらを伺うと、青年は目を細めて直行をにらみ返す。
なんだよ とイラつきながらも視線を外せずにいるとつかさず佐川さんが自分を彼に紹介した。

「ああ、こちらは最近越して来た…中井さん」
「どーも」
「あー…どうもはじめまして。305号の外川(トガワ)です」
「中井さんは301号室の林さんの甥っ子さんで…あらこれからお仕事なのにすみません引き止めちゃって」
「いえ、そんなことはないです」

ウソではないが少しだけ痛いところをつかれた気がしてちょっとだけ首をすくめると外川と紹介された青年が少し見下すように直行を見た。
なんだコイツうぜえ
そう思うがこんなチンピラにかまってる暇などないのだ。
直行はじゃ、と短く挨拶し、佐川さんにだけ丁寧に頭を下げるとさっさと駅前へと足を運んだのだった。
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職業:
エディトリアルデザインする人
趣味:
漫画と旅と映画
自己紹介:
某美大卒。分裂気質。仕事がないと生きて行けないサラリーマン気質。