2010.01.05(Tue) 【おはなし】
石垣君の日記
ヒグチが面白いもん見せてやるよというので付いて行った。
ヒグチは高校のクラスメートで、ちっこくて(俺もちっこいって言われるけど)メガネかけたり外したりしてて、猫みたいな目をしてて女子には一部にかわいいといわれている奴だ。でももっぱら男共にはウケが悪い。
いちいち偉そうなのとか、イライラすると頭ガリガリし出したりするのとか、何考えてるのか時々わからないのがしゃくに触るんだとか。他の友達が言ってたけど、俺にとってはふーん、っていう程度のことだった。そんなのどうでもいいっていうか、別にその辺こだわったりするほど神経質ではないし。
で、だからって仲良くする義理もないっちゃないんだけどヒグチって面白いことたくさん知ってるわけ。特にオタクっぽい俺にはたまらないようなマニアックなプラモの限定販売情報とか、ちょっと危ないソフトの購入ルートとか、そんな感じのどこから拾ってくんだ?っていう情報をくれる。
そういうのきっかけで話してるうちに俺もクラスからちょっと浮いちゃって、結局二人でつるむことが多くなった。
「面白いもんってなんだよ」
「先に言ったらつまんないだろ」
前にちょっと変な体験も一緒にいるときにしたんだけどそれは追々説明するとして。
その情報通のヒグチがもってくる面白いもんっていうんだから俺は期待してワクワクしながらついてったわけだ。
着いた場所は学校の裏庭みたいなとこだった。
校舎の北側にある場所で日中も陰ってて夏は涼しいけど冬はかなり寒い。周りは木々しかないような丘の上に建つ校舎だけど、その場所に近づくにつれ、鳥の声がどんどん聞こえなくなる。今はあたりが静まり返っていて時々風で葉がこすれるざわざわって音だけがした。そこはよくヤンキーがタバコ吸ってたりするエリアだったから俺は内心でビビってたけど、つとめて平然とした顔をしながら突っ立ってた。
ヒグチは俺に見向きもせず、スタスタと塀の側まで歩いて行く。
そして「あった」といって振り返って俺に手招きをした。
俺はしゃがみこんでそれを見て、それからゆっくりヒグチを見た。
それはただの壁の落書きだった。細い油性で描かれたとても小さな字で、箇条書きに
前半に、二桁の数字、後半に短い文章がくっついている。
数字は50から始まって
かくれる
ひとりみつける
ひとりにがす
にげる
というような言葉が淡々と書き連ねられていた。
「なにこれ」
と、俺
「知らない。でも面白そうだからお前に教えてみた」
と、ヒグチ。
なんか知らない?こういう暗号。そうヒグチが続けるが俺にはなんのことだかさっぱりわからなかった。わかんねーよ、俺頭良くないもん。お前の方が、頭いいだろ。そうちょっとムキになりながら反論するとそうなんだよなぁと平然と言ってのけた。
まあこいつが失礼なのはいつものことだから別にどうってことはなかったんだけど。
それにヒグチには俺以外に友達と呼べるような気軽な人間もいなかったわけだし、俺はそのころ丁度戦争物のプラモに凝ってて、その余波でナチスの暗号がどーのみたいな付け焼き刃みたいな知識を披露していたから(とはいってもヒグチは大抵それ以上のことを知ってた)当たれば八卦みたいな気持ちで教えたんだと思う。ただ、それだけ。
それだけだと思いたいんだ、俺は。
だからあのとき壁の向こう側に感じたなんともいえない気配とか、そんな理屈にもならない悪寒なんて気のせいだって思いたかったんだ。
ヒグチは高校のクラスメートで、ちっこくて(俺もちっこいって言われるけど)メガネかけたり外したりしてて、猫みたいな目をしてて女子には一部にかわいいといわれている奴だ。でももっぱら男共にはウケが悪い。
いちいち偉そうなのとか、イライラすると頭ガリガリし出したりするのとか、何考えてるのか時々わからないのがしゃくに触るんだとか。他の友達が言ってたけど、俺にとってはふーん、っていう程度のことだった。そんなのどうでもいいっていうか、別にその辺こだわったりするほど神経質ではないし。
で、だからって仲良くする義理もないっちゃないんだけどヒグチって面白いことたくさん知ってるわけ。特にオタクっぽい俺にはたまらないようなマニアックなプラモの限定販売情報とか、ちょっと危ないソフトの購入ルートとか、そんな感じのどこから拾ってくんだ?っていう情報をくれる。
そういうのきっかけで話してるうちに俺もクラスからちょっと浮いちゃって、結局二人でつるむことが多くなった。
「面白いもんってなんだよ」
「先に言ったらつまんないだろ」
前にちょっと変な体験も一緒にいるときにしたんだけどそれは追々説明するとして。
その情報通のヒグチがもってくる面白いもんっていうんだから俺は期待してワクワクしながらついてったわけだ。
着いた場所は学校の裏庭みたいなとこだった。
校舎の北側にある場所で日中も陰ってて夏は涼しいけど冬はかなり寒い。周りは木々しかないような丘の上に建つ校舎だけど、その場所に近づくにつれ、鳥の声がどんどん聞こえなくなる。今はあたりが静まり返っていて時々風で葉がこすれるざわざわって音だけがした。そこはよくヤンキーがタバコ吸ってたりするエリアだったから俺は内心でビビってたけど、つとめて平然とした顔をしながら突っ立ってた。
ヒグチは俺に見向きもせず、スタスタと塀の側まで歩いて行く。
そして「あった」といって振り返って俺に手招きをした。
俺はしゃがみこんでそれを見て、それからゆっくりヒグチを見た。
それはただの壁の落書きだった。細い油性で描かれたとても小さな字で、箇条書きに
前半に、二桁の数字、後半に短い文章がくっついている。
数字は50から始まって
かくれる
ひとりみつける
ひとりにがす
にげる
というような言葉が淡々と書き連ねられていた。
「なにこれ」
と、俺
「知らない。でも面白そうだからお前に教えてみた」
と、ヒグチ。
なんか知らない?こういう暗号。そうヒグチが続けるが俺にはなんのことだかさっぱりわからなかった。わかんねーよ、俺頭良くないもん。お前の方が、頭いいだろ。そうちょっとムキになりながら反論するとそうなんだよなぁと平然と言ってのけた。
まあこいつが失礼なのはいつものことだから別にどうってことはなかったんだけど。
それにヒグチには俺以外に友達と呼べるような気軽な人間もいなかったわけだし、俺はそのころ丁度戦争物のプラモに凝ってて、その余波でナチスの暗号がどーのみたいな付け焼き刃みたいな知識を披露していたから(とはいってもヒグチは大抵それ以上のことを知ってた)当たれば八卦みたいな気持ちで教えたんだと思う。ただ、それだけ。
それだけだと思いたいんだ、俺は。
だからあのとき壁の向こう側に感じたなんともいえない気配とか、そんな理屈にもならない悪寒なんて気のせいだって思いたかったんだ。
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